’89年 トミックス総合カタログの記憶

以前取り上げた88年に続き、今回は翌1989年のトミックス総合カタログを見ていきます。
発売されたのは1988年11月。昨年同様、年末に向けて盛り上がる時期の発行です。定価は前年から少し上がり、1000円でした。

かなり傷んでいるのは、それだけ読み込んだ証ということでお許しください・・

値段が上がったのは、前年から60ページほどボリュームアップしたからでしょう。8ページにわたって「特集・ブルートレインの魅力」を展開するなど、この年はブルートレインを全面推し。24系25型北斗星を新製品の目玉商品として位置付けていることがわかります。
そのほかにもキハ183系500番台や485系かがやき・きらめき、103系常磐カラー、フラノエクスプレスなどの紹介に伴いページ数が増えているのですが、実は地味に後半の「JR車両の編成例」やら「レイアウトプランニング」なども増量しており、単なる新車の登場以外も含めて、力の入れ具合が伝わってきます。

印象深いのは、何といってもカタログ冒頭の、北斗星をディスプレイしたレイアウトの美しさですかね。
DD51の重連ですので、室蘭本線のどこかのイメージなのでしょうか・・こんなRがつく線形なのかどうかは別にして(笑)、この波の質感や、フルスクラッチと思しきヨット。河口付近の木製の橋なども含め、素晴らしいです。

よほど素晴らしいと製作側も感じたのか、別角度でも手を替え品を替え登場します。
北斗星そのものの紹介とともに、さらっとジオラマ写真が挿入されるのも良かったですね。

そして、トミックスの入門で通る「ベーシックセット」の紹介では、この時期よく見た「理想的な家族の肖像」が登場します。
1988年版のカタログでは、確か子供一人で運転するシーンが出ていましたし、以前紹介した「トミックスガイドブック」にも似たようなシーンはありました。
ただこの写真は子供の髪型といい、彫りの深いパパの顔といい、ほとんど集大成といっても過言ではないかもしれません。
その後もしばらく登場してたようにも思いますが、バブル崩壊がきっかけになったのかどうか?だんだんとこうしたモデルの提示は減っていきます。

「車両」紹介ページの冒頭の写真。前年からさらにパワーアップして迫ってきます。
(前年の、壁面にディスプレイされたかのような一覧写真も好きでしたけど)
こんな車両基地を作りたいと何度思ったことか。

ただ・・・今にして思うと「多種多様な日本の鉄道車両のほとんどをラインナップ」というのは、なかなかの過大な表現でもあります。
というのも、当時もっとも馴染みのあった東京の通勤電車という観点で見ると、この写真にもある103系くらいしかありませんでしたし、特急型も気動車も、ラインナップが充実していくのはもう少し先の話になります。

それはさておき。建物のページの扉の写真も、素晴らしいものがありました。
「ポンと置くだけでも」と書いてある通り、この駅前のシーンも、そんなに大した情景化はしていないと思います。手前にあるバス停など、ほとんどプラシートから切り出しただけでしょう。
それでも、この高架駅前のシーンは飽きるほど眺めたものです。

そしてたぶん、このカタログが初出ではないと思うのですが・・
「照明システム」の紹介ページで紙幅を取っていた、この街中の夜を演出した写真も趣深いです。
当時はLEDもないので、実際これだけ街灯を使ったらどれだけ電力を消費するのか・・と思わないのでもないのですが、公園やヤード照明灯、さらに「102」に加えて、ラーメン屋の「くるくる軒」から漏れ出す灯には魅入られた記憶があります。というかくるくる軒、ものすごい繁盛しています(笑)
実際「102」の中型ビルと、その下にある「高架駅B」の店舗は、横幅は合っても縦幅が合わないはずなのですが・・まあ、その辺は目に見えない奥側で何らかの処理がされているのか、単にズレたまま放逐されているかもしれませんけど。

例によって本筋からズレた、脱線ばかりの振り返りですが、このように贅沢に使われている実写やジオラマの写真が、当時のトミックスの勢いを感じると言えないこともない?1989年の総合カタログでした。